指示と依頼
ここでは上司から部下への指示、あなたから同僚や後輩への依頼の仕方、そのときの受け方、断り方を取り上げます。これらは会社の中では基本会話に属しますが、相手の地位年齢によって使い分けが生じるので、日本語学習者にとってはやっかいなものです。
1、 部下への指示の仕方
(1) 部下の作業を急がせる
<男性上司から部下へ>
課長:李君、これ、大至急お願いしたいんだが、。
李 :コピーですね。はい、承知しました。
課長:十時までにできるかな。
李 :はい、2、30分でできると思います。
課長:じゃ、よろしく。
<女性上司から部下へ>
課長:李さん、忙しいところを申し訳ないんだけど。
李 :はい、何でしょうか。
課長:このコピー、十時までにしてもらえない?
李 :はい、かしこまりました。
課長:じゃ、お願い。
(2) 部下に仕事を頼む
<男性上司から部下へ>
課長:李君、実は君にやってもらいたい仕事があるんだが、。
李 :はい、何でしょうか。
課長:今度の新商品の販売企画を君に任せたいと思っているんだ。どうかな。
李 :はい、喜んでやらせていただきます。
課長:じゃ、この件は君に任せるから、よろしく頼む。
<女性上司から部下へ>
課長:李さん、実はあなたにやってもらいたい仕事があるんだけど。
李:はい、何でしょうか。
課長:今度の新商品の販売企画をあなたに任せたいと思っているんだけど、どう?
李:そんな大役、私に務まるでしょうか。
課長:あなたを見込んで、私が頼むのよ。私もできるだけ協力するし、何があっても私が責任をとるから。
李:そこまでおっしゃっていただけるのなら、難しいとは思いますが、私なりに全力を尽くします。
課長:よろしく頼むわね。
四、常套表現と解説
忙しいところを申し訳ないんだけど
これ、大至急お願いしたいんだけど
申し訳ないけど、ちょっと手を貸してもらえる?
~て‐ください/もらえませんか
~て‐くれ/くれない?/もらえない?
~て‐ほしいんですが/もらいたいんですが
~て‐ほしいんだけど/もらいたいんだけど
この件は君に任せるから、よろしく頼む
何があっても、私が責任をとる
私もできるだけ協力するから、ぜひ、がんばってくれ
答え:
承知しました/かしこまりました
はい、喜んでやらせていただきます
そのような大役が私に務まるでしょうか
難しいとは思いますが、私なりに全力を尽くします
五、資料の追加
「~しろ」「~なさい」などの命令の形は、日常生活では家庭の中で親が子供を、教師が学生を叱るときに使うぐらいで、皆さんが社内やビジネスの場で使う機会はほとんどないでしょう。現在では社内で上司が部下に指示するときにも、先ず、のような前置きと言って、それから依頼や希望の形を使って指示するのが普通です。業務指示の場合、男性上司は「~てくれ」「~てほしい/~てもらいたい」などの印の表現を使い、女性上司であれば、「~てくれない?/~てもらえない?」のようにもう少し柔らかい表現を使うことが多いでしょう。なお、印はお客や知らない人など、遠慮がいる相手に使う表現で、ビジネス会話ではお客や取引先の人に何かを依頼するときの表現になります。
さて、上司方の指示があったとき、親しい上司であれば「はい、わかりました」でもいいのですが、のように「はい、承知しました/はい、かしこまりました」と応えるのが会社内であれば基本で、その方が上司から好感を持たれるでしょう。
しかし、困難が予想される指示に対しては、のように「そのような大役が私に務まるでしょうか」と少し予防線を張って、上司からの「何があっても私が責任をとる」とか、「私もできるだけ協力するから」という言葉を待って、「難しいとは思いますが、私なりに全力を尽くします」と答えるのが賢明です。つまり、そうしておけば、うまくいかなかったときも上司との共同責任になりますし、これはビジネスマンとしての知恵です。

