(四)指導項目
1. 単語
(略)
2.注釈・文法
(1)動詞の意向形
分類 | 例 | 意志形 |
一段動詞 | 寝る 起きる | 寝よう 起よう |
五段動詞 | 使う 書く 泳ぐ 話す 立つ 死ぬ 呼ぶ 読む 座る | 使おう 書こう 泳ごう 話そう 立とう 死のう 呼ぼう 読もう 座ろう |
サ変動詞 | する | しよう |
カ変動詞 | 来る | こよう |
◆意向形単独で使った場合、意志の意味では聞き手を意識しない独り言になる。
○今日は妻の誕生日だから、早く帰ろう。
○もう12時か。そろそろ寝よう。
◆聞き手に対して使って勧誘を表すこともできる。
○仕事が終わってから、飲みに行こう。
○さあ、あと少しで終わるから、みんなで頑張ろう。
(2)Nになる
◆Nではない状態からNの状態に自然に(無意識裏に)変化したことを表す。
○息子は9月から小学生になります。
○将来、サッカーの選手になりたいです。
○早く大人になって、お金をたくさん稼ぎたいです。
○4年前に、先生になりました。
(3)には
◆「…する時には」「…の場合には」「…したら」などの意の、軽い仮定条件を表す。動詞の辞書形に接続する。
○始発に乗るには、4時に起きなければなりません。
○向こうに着くには、5時間も必要です。
○朝日新聞を読むには、電子辞書がいります。
○先生になるには、教員免許を取得することが必要です。
(4)ぜひ
◆どんな困難も乗り越えて実行しようとするさま。どうあっても。きっと。
○ぜひ富士山に登りたいです。
○海を見たことはありません。ぜひ一度見たいです。
◆心をこめて、強く願うさま。なにとぞ。
○ぜひうちへ遊びに来てください。
○ディズニーランドは面白いから、ぜひ行ってみてください。
(5)ということだ
人から聞いたという意味である。人1が言っていた事を人2に伝える際に用いる文型である。「~によると」「ニュース/話では」と呼応して用いることが多い。普通体に接続する。
○彼女は今年結婚したということです。
○留学生が多いということなので、ここの大学を選びました。
○田中さんからメールをもらいました。来年世界一周するということです。
○天気予報によると、事件の原因はまだわからないということです。
3.文型
(1)願望
◆Nがほしいです
「ほしい」はあるものを手に入れることに対する願望を表す形容詞である。願望の対象になるものは「Nが」で表される。
○ぼくは新しい自転車がほしいです。
○若いときは洋服や靴がたくさんほしかったですが、今はあまりほしくないです。
○A:誕生日プレゼント、指輪はどうですか。
B:うーん、指輪はあまりほしくないんです。
○A:今一番ほしいものは何ですか。
B:そうですね。寝る時間がほしいです。
この文型は主語が話し手の場合のみ使える。つまり、第一人称の欲求や希望を表す。また、日本では、自分自身の「本能的」な「欲求/欲望」を<ソト>や<ヨソ>に対してあらわにしないという暗黙の了解、つまり、タブーが存在するためであるが、たとえ<ウチ>関係でも、何を見せても恥ずかしくない「家族や仲間内」の互いに「甘えあえる」関係だけで、関係が疎遠になる目上の親戚や上下関係のある会社や組織の上司に対しては使うことができなくなる。
○(先生に)ミルクはいかがですか。(❍)
○(先生に)ミルクがほしいですか。(×)
◆(連用形)たいです
ある行為をすることに対する願望は「たい」を使って表す。動詞の連用形に接続する。「たい」は形容詞と同じように活用する。
○私は彼女のそばに座りたいです。
○ああ、暑いビールが飲みたいなあ。
○お母さん、宿題をしたよ。もう勉強したくないんだけど、遊んでいい?
○昨日アニメを見に行きました。私は見たくなかったんですが…
基本的には主語が話し手の場合にしか使えない。また、行為が「ビールを飲む」などヲ格を取る場合、「を」を「が」に替えることがある。しかし、下記のような文では、「を」を「が」に替えることはできない。
○おいしいコーヒーをたくさん飲みたいです。
○もっと話をしていたいです。
ヲ格と動詞の間に他の要素が入っている場合と、動詞に「ている」などの形式が付いている場合など、「を」を「が」に替えることはできない。
○(お土産屋)社長、何が買いたいですか。(×)
○(お土産屋)社長、何をお買いになりますか。(❍)
「Nがほしい」と同じように、関係が疎遠になる目上の親戚や上下関係のある会社や組織の上司に対しては使うことができなくなる。
◆(連用形)たいと思います
「たい」が実際の対話場面で最もよく使われるのは、次のような、後に「と思う」などのバリエーションが付く場合である。
○もう若くないから、来年あたり結婚したいと思います(思っています)。
○来月コンサートがあるので、彼女を誘って見に行きたいと思います(思っています)。
○李さんはたくさんの知識を勉強したいと思っています。
○彼女は卒業してから、アメリカへ留学に行きたいと思っています。
「~たいと思う/思っている」は「~たい」と逆に、家族や仲間内など、親しい<ウチ>関係では使わないが、そのほかなら、すべての場面で使える。ただ、文末に「のだ+けど」をつけると、親しい<ウチ>関係でも使えるようになる。「たいと思っている」は第一人称の話し手が「以前から現在に至るまでその考えをずっと持ち続けている」ことを示す。第三人称の行為の欲求や欲望も表す。
(2)意志
◆(意向形)ようと思います
計画、予定、目標を実行する1人称「私」の意志を表す。
○風が治ったので、明日から出勤しようと思います。
○明日試験だから、いつもより早く起きようと思います。
○この仕事は大切だから、ほかの人に頼もうとは思いません。
○もう10年近く付き合っているので、来年結婚しようと思っています。
「~ようと思う」は話し手の「とっさの思いつきや当面の予定、短期的な計画を表す意志である。長期計画になるかという点で、実現するにはそれ相応の覚悟が必要なものをターゲットにする場合、話し手が「以前から現在に至るまでその考えをずっと持ち続けている」ことを示す「~ようと思っている」が使われる。「~ようと思う」は第一人称の意志にしか使えないが、第三者の意志を表す場合は、「~ようと思っている」を使う。
○彼女は来月音楽の勉強に、イタリアへ出発しようと思っています。
○彼は将来国に帰って貿易会社を作ろうと思っています。
○A:将来、自分の家を持とうと思いますか。
B:ええ、持とうと思っています。
○会社は経営不振を理由に、中高者をリストラしようと思っています。
◆(辞書形・否定形)つもりです
「つもりだ」は事前に決意して固まっている意志を表す。
○私はテニスクラブに入るつもりです。
○3月の終わりに私たちは結婚するつもりです。
○30歳まで結婚しないつもりです。
○夕べ早く寝るつもりでしたが、面白い映画を見てしまって、寝るのが遅くなった。
意味は「~ようと思う」とだいたい同じだが、計画はより具体的で、実現する可能性が高い。また、「~ようと思う」は実現するまでの時間が短いことにも使うが、「~つもりだ」は実現までの時間が短いことにはあまり使わない。つまり、次の例のようにその場でやろうと決めたことには使えない。
○では、今から朝のミーティングをするつもりです。(×)
○では、今から朝のミーティングをしようと思います。(❍)
○A:雨が降りそうですよ。
B1:じゃあ、傘を持っていくつもりです。(×)
B2:じゃあ、傘を持っていきます。(❍)
また、否定形は普通、動詞の否定できない形にして、「~ないつもりだ」にする。一歩で、「~つもりはない」という表現もあるが、相手の勧めを断るときなど強い否定に使われる。
○A:王さんに謝ったらどうですか。
B:いいえ、謝るつもりはありません。
(3)~予定です
◆「予定」は、これから行う事柄についてあらかじめ決めておくことである。前もって見込んでおくことである。接続はNの場合、「Nの予定です」になり、Vの場合は「V辞書形予定です」
○私は卒業後留学する予定です。
○冬休みにハワイへ旅行する予定です。
○旅行は1か月の予定です。
○7月の終わりにドイツに出張する予定です。
「予定だ」と「つもりだ」との使い分けが問題になる。
○私は来年就職する(予定です/つもりです)。
「つもりだ」が話し手の個人的な心づもりを表すのに対して、「予定だ」は他の人との相談の上決めたことや公的な決定事項を表す。
○今度の週末にクラス全員でお花見に行く(❍予定です/×つもりです)。
(4)V(連用形)てみます
◆「~てみる」は、うまくいくかどうか、正しいかどうかなどはわからないが、「ある行為を試みに行う」という意味を表す。
○このケーキを少し食べてみてください。
○一度パリに行ってみたいです。
○ぼくが作ったケーキですけど、食べてみませんか。
○行き方がわからなかったので、道を歩いていた人に聞いてみました。
なお、「~てみる」は試みに何かをするということだから、次のような表現は不自然になる。
○このケーキをたくさん食べてみてください。(×)
直すと、
○このケーキを少し食べてみてください。OR このケーキをたくさん食べてください。
(5)~ても、~
典型的には、家庭的な逆接を表す。「たとえ」「もし」「万一」などの仮定を表す副詞がいっしょに使えることが特徴である。「N/AN+でも」「Aく/Vても」。
○たとえお金がなくても、カードで買い物ができます。
○時間があっても、行きません。
○明日の試合、雨が降っても、しましょうよ。
○このカメラはこの水の中でも取ることができます。
「~ても」は次のように複数の前件を並べて使うことができる。この2つの前件がともに後件と逆接の関係になる。
○雨が降っても、風が吹いても、試合は行われます。
○このコップは、落としても、ぶつけても割れません。
「疑問詞~ても」の形で使うこともある。
○何があっても、試合が行われます。
○誰が首相になっても、同じです。

