身振り
体全体やその一部を動かして、自分の気持ちや考えを表すことを身振りと言います。
話をしている時に、喜びや悲しみや怒りなどの感情は、目や顔に表れますし、手や足の動きなどによっても強調することができます。身振りを混ぜることで、口にしている言葉の意味をいっそうはっきり伝えることができます。
しかし、それだけではありません。身振りは普通の言葉の代わりとして、それだけで用いることができます。「いやだ」、というときに「首を横に振る」とか、「静かにしなさい」という代わりに「人差し指を縦に口に当てる」のはその例です。
また、身振りによって、口では表しにくい気持ちを伝えることもあります。例えば、特定の人に何かの合図を送りたい時に「片目をつぶる」とか、「失敗して恥ずかしい・申し訳ない」という気持ちを表す時に「頭をかく」のがその例です。
世界中の誰にも分かる身振りは、人差し指と中指を立てて表す「Vサイン」でしょう。この「勝利の合図」は、テレビのスポーツ番組などでよく見られます。上に挙げた「静かに」という身振りもどこの国でも通じるでしょう。
けれども、同じ身振りでも、国や民族によって意味が違う場合があります。例えば、「親指を立てる」のは、多くの国では「オーケー、よい、最高だ」という意味を表しますが、日本では「男、彼、父親」などを表します。息子が友人に親指を立てて「これにどなられた」と言えば、「父親に大きな声で叱られた」ということです。また、「親指と人差し指で耳たぶをつまむ」のは、ほとんどのアジア諸国やアメリカ合衆国などでは「よく聞きなさい」とか、あるいは「聞こえない」など、聞くことに関係のある身振りですが、日本や韓国では、熱い物に触れた時に指を早く冷やそうとする動作です。
また、同じことを表すのに、違う身振りで示す場合もあります。「私、自分」を示すのに、親指で胸を指さしたり、手のひらを胸に当てるのは国際的な身振りですが、日本人は人差し指で自分の鼻を指さします。日本人が手を胸に当てるのは、「安心した」ということを表す場合です。
このように、身振りはとても変化にとんだ面白い言葉です。それぞれの国の独特な身振りは、その国の演劇や舞踊の中にも取り入れられて、民族芸能の大切な要素になっています。




