目录

  • 1 中国のシンボル
    • 1.1 国旗・国章・国歌
    • 1.2 中国の民族
    • 1.3 中国の文字
    • 1.4 中国の言語
    • 1.5 长沙话版アニメの《齐木楠雄の災難》
  • 2 中国の衣装
    • 2.1 自然本来のうろけつ染め
    • 2.2 様々な民族衣装
    • 2.3 旗袍(チイパオ)のあでやかさ
    • 2.4 漢服の美しさ
    • 2.5 微课讲堂之中国传统服饰旗袍
  • 3 中国の食文化
    • 3.1 満漢全席
    • 3.2 中華料理のメニューの読み方
    • 3.3 中国の食事マナー
    • 3.4 美食篇百科小知识视频——餃子の作り方
    • 3.5 微课讲堂之中国八大菜系
  • 4 中国の建物
    • 4.1 万里の長城
    • 4.2 故宮博物院
    • 4.3 蘇州の庭園
    • 4.4 莫高窟
    • 4.5 微讲堂之中国古建筑
  • 5 中国の伝統的な年中行事
    • 5.1 春節
    • 5.2 元宵節
    • 5.3 清明節
    • 5.4 端午節
    • 5.5 中秋節
    • 5.6 微讲堂之中国春节
  • 6 お酒の文化
    • 6.1 お酒の種類
    • 6.2 酒の飲まれ方
    • 6.3 お酒と民俗
    • 6.4 お酒と文学
    • 6.5 微讲堂之中国酒的种类
  • 7 お茶の文化
    • 7.1 お茶の文化の概説
    • 7.2 中国十代銘茶
    • 7.3 中国茶基本の茶器
    • 7.4 中国茶の入れ方
  • 8 音楽と演劇文化
    • 8.1 京劇
    • 8.2 昆曲(昆劇)
    • 8.3 伝統楽器
    • 8.4 传统乐器演奏欣赏——女子十二乐坊《我和我的祖国》
  • 9 民間芸術
    • 9.1 刺繍
    • 9.2 切り紙
    • 9.3 影絵
    • 9.4 一起来学剪纸吧——窓に飾る切り紙
  • 10 中国漢方医
    • 10.1 中国伝統医学の起源と書籍
    • 10.2 常用の漢方薬
    • 10.3 中医学の療法
  • 11 中国の四大発明
    • 11.1 羅針盤と航海術
    • 11.2 製紙術と文明の伝播
    • 11.3 知識を広めた印刷技術
    • 11.4 火薬――錬丹術がもたらした発明
  • 12 中国の四大名著
    • 12.1 『三国演義』――三国の歴史絵巻
    • 12.2 『水滸伝』――英雄像の創作
    • 12.3 『西遊記』――孫悟空のヒロイズム
    • 12.4 『紅楼夢』――「有情之天下」が崩壊する悲劇
  • 13 知恵と信仰
    • 13.1 儒教
    • 13.2 孔子
    • 13.3 孟子
    • 13.4 論語
昆曲(昆劇)

昆曲(昆劇)とは

昆曲とは京劇より古い演劇形式で、元末から明の初め、江蘇省昆山一帯に生まれました。最初は蘇州一帯で演じられていましたが、明の万暦帝の時代(1573~1620)になると蘇州を中心に長江以南、銭塘江以北に広まり、その後北京にも伝わり、明の中期から清の中期にかけて影響力の最も大きな伝統劇になりました。

昆曲の特徴

昆曲の特徴としては抒情性の強さ、動作の繊細さ、節回しの美しさ、優雅な舞踊などが挙げられます。清代の中期以降、演劇の王者としての地位は北京を中心に発展した京劇が取って代わりますが、昆曲と京劇、見た目はほとんど同じです。昆曲の特徴は主に節回しの繊細さや優美さにあります。

昆曲発祥の地・蘇州

昆曲発祥の地・蘇州

昆曲の発祥の地は江蘇省の蘇州です。「上に天堂あり、下に蘇杭あり」(天には天国があり、地には蘇州・杭州がある」という言葉があるくらい美しいとされた土地です。マルコ・ポーロは蘇州を訪れ、その旅行記に「蘇州の美しさは驚くほどだ」と書いています。青瓦に白壁、河にかかる小さな橋、霧にかすんだ川面に浮かぶ船、古刹からは鐘の音が響いてくる…こんな場所だったようです。戦前の歌手・李香蘭が映画の主題歌として歌った「蘇州夜曲」はさまざまな歌手に歌い継がれ、蘇州という地名は日本人にとって今も魅力的な響きを持っています。が、十年ほど前に訪れた蘇州は中国のごく普通の地方都市で往年の輝きは感じられませんでした…。

農村の昆曲
農村で村人たちが昆曲を見るため集まっています


昆曲の節回し

昆曲の節回しは「昆腔」とも言います。「腔」と言う以上単なる民謡などではなく、やや複雑な節回しを持ちます。この節回しについて明代の文人は「非常に柔らかく、水車で回る臼のようで耳い快い」とほめています。役者の歌い方についても「平仄を守り、すべての音は非常になめらかで出す音に俗っぽさがなく、歌い終わりは消え入るようでその口元も優美である」と言っています。


昆曲の有名な演目

牡丹亭
牡丹亭

昆曲の有名な演目には春秋時代呉越の戦いを背景とした范蠡と西施のラブストーリー『浣紗記』、昆曲の代表作品である『牡丹亭』、玄宗皇帝と楊貴妃の悲劇を描いた『長生殿』、明の興亡を背景とした文人と妓女のラブストーリー『桃花扇』など多彩な作品があります。特に『牡丹亭』は日本でも有名で、歌舞伎役者の坂東玉三郎が蘇州弁でこの昆曲を演じたことで話題になりました。

『長生殿』のストーリー

長生殿
長生殿

長生殿』もまた『牡丹亭』と並んで昆曲の代表的な作品です。ここでは簡単に『長生殿』のストーリーを紹介しましょう。

『長生殿』は全50幕、安禄山の乱を背景にした玄宗と楊貴妃のラブストーリーです。楊玉環という女性が玄宗に召されて貴妃となり、その一族は栄華を極め、やがて安禄山の乱が起こり、楊貴妃は殺されます。乱が平定されると、妃を失って悲しみにくれる玄宗は道士に命じて妃の魂を探しに行かせます。やがて道士は海の仙山に楊貴妃がいることを探し当て、こうして月宮で玄宗と楊貴妃は再会するのです。こうした筋を優美な歌とセリフで演じていきます。

玄宗皇帝と楊貴妃の史実をなぞってはいるものの、汚らしく感じられる史実は捨て、ラブストーリーとして清らかな美のみそこからすくい上げて舞台化した作品で、優美な昆曲にふさわしい演目と言えましょう。

2017年に中国の昆曲団が来日し『長生殿』を国立能楽堂で上演しました。日本の高校の世界史で唐の歴史を学ぶ際玄宗皇帝と楊貴妃のストーリーにも触れますので、今後も昆曲団によってこの演目の来日上演があるかもしれません。