一、羅針盤とは
羅針盤(コンパス・方位磁石ともいう)とは磁石が南北を示すことを利用して船などの進路を測る道具のことです。

少し高い山に登る時は必携です。その場合普通「羅針盤」とは言わず「コンパス」と言いますね。道に迷った時にコンパスを使えば東西南北の方角がわかります。コンパスは丸い形をしていて東西南北の文字が書いてあり、真ん中に針があります。方角を知りたい時はコンパスを平らな場所に置きます。すると針がくるくる回って止まります。針の先に色が着いている方が北です。そこで文字盤に書かれた「北」という文字を針先まで動かすと、東西南北が一目でわかるのです。山で道に迷うと命にかかわる場合がありますが、コンパスはこの危険を減らしてくれます。このすぐれものを発明したのは昔の中国人です。
二、羅針盤はいつ発明されたのか
11世紀に出版された沈括(北宋時代の政治家・学者)の随筆『夢渓筆談』(科学技術に関する話題が多い)に「磁針の中心に蚕の繭の新しい繊維を1本ロウで固定し、風のない場所に吊り下げると、それは常に南を指す。針の中には北を指すものもある」と書かれています。ヨーロッパで初めて羅針盤について書かれたのは12世紀の終わりに出版されたアレクサンダー・ネッカムの『物の本性について』という本で、「曇りの日や夜船の方位を知りたい時に磁石と針を触れさせると、針は円を描いてぐるぐる回り、動きが止まると先が北を示している」とあります。この本が書いている羅針盤は船乗りが中国人と交流する中でヨーロッパに伝わったものと考えられています。
羅針盤はかなり古くから中国に存在していましたが、航海に使われるようになったのは9世紀から11世紀の間と言われます。では中国ではいつごろからこうした方位磁石が使われていたのでしょうか。
三、「司南」…羅針盤のひな型
中国の羅針盤というと不思議な写真が出てきます。四角い枠の中には円があり、その真ん中に一方の先端が細いひしゃくのようなものが置いてある。

このひしゃくのようなものは「司南」と言います。四角いものは「地盤」、円は「天盤」と言います。天盤は手で動かすことができます。天盤と地盤には「甲乙丙丁…」とか「子丑寅辰…」などの文字が等間隔で書かれています。このうち「子」は「北」、「午」は「南」を意味します。
四、古代中国の方角へのこだわり
中国では古くから「正しい方角」というものがとても重視されていました。地位の高い人は「坐北朝南」(北側に座って顔を南に向ける)ことになっていました。この方角を測るものを「圭表」と言いました。「圭表」とは地面に棒を垂直に立て、影の長さや位置を測って、東西南北の方位や時間を知るためのものです。
西安で発掘された約6000年前の新石器時代の遺跡では住居の出口がみな南向きになっていました。この頃からすでに古代中国人には方位知識があったと考えられています。

