
春節とは、中国の旧正月(旧暦の正月)のことです。中国では1月1日ではなく、旧暦の正月を盛大に祝い、通常1週間程度(春節の前日~春節の1週間後程度)が休日になります。
一、春節は旧暦の正月
中国では1912年に太陽暦が採用されましたが、伝統的な祝日は太陰太陽暦(陰暦、旧暦とも言います)で祝います。
日本ではお正月は全国一律に太陽暦で祝いますが、東アジアや東南アジアで太陽暦でお正月を祝う国は少数派です。中国大陸のほか香港、台湾、韓国、モンゴル、ベトナム、シンガポール、マレーシアなど、お正月と言えば皆旧暦のお正月だそうです。
つまり中国人にとってお正月とは旧暦で祝う春節のことで、日本人が祝う太陽暦のお正月は元旦のみ休日ではあるものの、一般にはお祝いしないのです。そしてこの旧暦というのが面白くて、旧暦の新年を太陽暦と照らし合わせると、毎年複雑な変化をします。たとえば2019年の春節は2月5日、2020年は1月25日、2021年は2月12日、2022年は2月1日、2023年は1月22日です。毎年1月の下旬から2月の下旬のどこかの日になるのですが、春節が近づかないと中国人に聞いても「来年の春節?いつかなあ。カレンダーが出るとわかるんだけど」という返事が返ってくることが多いのです。
二、春運 延べ37億人の大移動

ふるさとを離れ都会で暮らしている人も、お正月となれば実家に帰って家族団らんを楽しみます。家族をひときわ大切にして生きている中国人にはいっそうこの気持ちは強く、春節が近づくと中国の交通機関は大混乱をきたします。いわゆる「帰省ラッシュ」ですが、これを中国語では“春运”と言います。おおよそ旧暦の12月15日から1月の25日まで約40日間の「帰省ラッシュ」によって運ぶ人の数はのべ37億人にのぼるそうで、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸、大洋州の総人口が一挙に引っ越す様(さま)にたとえられています。これは30年ほど前まではのべ1億程度だったそうで、いかに近年の中国人が都会に出て働くようになったかを表してもいるわけです。
三、中国の大晦日とその習慣

日本ではお正月の行事は暮れの大掃除あたりから始まり大晦日になるといよいよお正月だなという気分になります。年越しそばを食べ、こたつに寝転がりながら紅白歌合戦を見て、勝敗の決着がつくとテレビの画面は一転厳かなお寺の映像に。今年もあとわずかで終わってしまうんだなとしみじみとした思いにとらわれていると、やがて遠く近く除夜の鐘が聞こえてきます。
中国の春節でも同様に(大晦日)があり、という国民的番組があって歌や踊り、コントなどのにぎやかなショーを繰り広げます。この番組は中国政府の肝いりですから、時にはその年の中国政府の動向も伺い知ることができます。家族みんなでこの番組を見たり、おしゃべりをしたりして夜を明かすんだそうですが、これを(大晦日に寝ずに新しい年を迎えること)と言います。これもまた日本と同様、過ぎ去る年を惜しみ、新しい年を心して迎えようという習慣でしょう。
三、春節(元旦)の習慣

日本では翌朝元旦になると、まるで時間の質が変化したかのような厳粛な心持ちで新年というまっさらで清らかな時を迎えますが、中国の春節にはこうした感覚はありません。中国の春節は爆竹や花火のにぎやかな音で始まり、このにぎやかさこそがめでたいのです。家族が全員そろい、皆でわいわい水餃子など(おせち料理)を食べ、近所の人と(新年のあいさつ)を交わします。どこの家の戸口にも(春節に門や入り口などに飾られる対になったおめでたいことば)が貼られ、窓枠にも赤い飾りが。赤い色はおめでたさの象徴です。


「春联-1」(上の画像)の日本語訳:「幸せな年を喜び迎え、豊かな暮らしを喜び受ける」
“春联”では文の構造も対になっています。
喜迎(喜び迎える)と笑纳(笑っておさめる)、 四季(四季、一年)と八方(四方八方)、平安富(平安無事の富)と富贵财(富貴の財)がそれぞれ対になっています。

「春联-2」(上の画像)の日本語訳:「春を迎え百の幸福を受け取る、平安無事にゆとりある暮らしを祝う」
迎春(春を迎える)と平安(平安無事)、接(受ける)と庆(祝う)、百福(百の福)と有余(ゆとりがある、豊かである)がそれぞれ対になっています。
こういう対句は売ってもいますし、よく字を知り、うまい字が書ける人に書いてもらうこともあるようです。
四、春節の爆竹と赤色にまつわる伝説

なぜ中国人はお正月を爆竹や赤い色で祝うのでしょうか?これにはこんな言い伝えがあります。
昔々中国には「年」という猛獣がいたそうな。「年」は正月が近づくと決まって村里に下りてくる。そして村人を襲い喰らう。村人は正月が来ると山に逃げた。
ある年の暮れ、村に一人の老いた物乞いがやってきた。村人はみな避難するのに必死で誰も相手をしない。一人の婆様が声をかけた。
もうじき「年」がやってくるだよ。あんたも早くお逃げ。さもないと喰われてしまう。
すると物乞いはこう言った。
わしがその「年」を退治してやろう。その代わり婆様、あんたの家に泊めておくれ。
婆様は物乞いに泊まり込んでもよいと告げ、みなと一緒にすたこら山に逃げていった。
その夜「年」がやってきた。「年」は村に入るとまず婆様の家に襲いかかった。すると家の中からは何かがパチパチとはぜる音、そして真っ赤な炎がチロチロと舌を出している。その前ではかの物乞いの老人が赤い着物をまといカラカラと大笑いしている。
「年」はそれを見てすくみあがった。そして転げるように一目散に逃げていった。
なんと獰猛(どうもう)な「年」はパチパチとはぜる音と赤い色を何より恐れるのだった。
こうして物乞いの老人によって救われた村は平和を取り戻し、村人は正月が来ると爆竹を鳴らし、赤い色の窓飾りや提灯(ちょうちん)で家を飾るようになった。めでたし、めでたし。
五、中国春節に関するおもしろい習俗
中国では春節を一年の始まりとし、この時期にすることがこの一年が幸運であるか否かを左右すると考えます。そのため多くのタブーとされることがあります。それは春節の一ヶ月前から春節後の元宵節(元旦から15日目)まで続きます。田舎の地方では年配者によって今でもきちんと行われていますが、都会の特に若い世代の人には知られていないかもしれません。 やったらよくないこと 幸運を逃してしまうので旧暦の1日には髪の毛を洗ったり、掃除したりすることはやってはいけない 不運な意味、色、言葉、数字で贈り物をしたり、不吉なことを言ったりすることさえあります。 事故を起こすこと、特にそれが病院への訪問、泣き、そして破損を意味する場合:すべての悪い兆候。 やっていいこと 赤い下着を身につける。特に年女と年男。不幸や災難を防ぐとされます。 大晦日に魚のような幸運な食べ物、特に元旦に残っている鯉やナマズを食べる。 たくさんの赤い爆竹と花火に火をつけて、悪を追い払い、幸運をもたらします。

